若くしてALS (筋萎縮性側索硬化症) になった――その運命を受け入れながら、もがきながら、それでも妻や仲間たちとともに懸命に挑戦し続ける姿が描かれていた。
訪問診療を始めてから、ALSを含む神経難病の患者さんを診る機会がずいぶん増えた。こんなにも多くの方が、神経難病を抱えて在宅で暮らしているのだということを実感しているところ。 総合病院で呼吸器内科医として勤務していた頃には、なかなか気づけなかったことでもある。
病気の進行の仕方は人それぞれ。家族背景や生活環境も違えば、当然、患者さんやご家族の価値観もさまざま。同じ病気であっても、医療的にも介護的にも、どのように関わっていくかは本当に多様で、実際にどんな選択をされるかも人それぞれなのだと、改めて感じている。
一人の医師として、医学的見解をふまえつつ、そうした患者さんとどう向き合っていくのか。大変だなと感じることももちろんあるけれど、やりがいのある仕事だとも感じている。
今回観た映画では、患者さんやご家族の「選択の苦悩」――たとえば、胃ろうを造設するかどうか、気管切開をするかどうか――といった場面はあまり描かれていなかった (気管切開により「声を失う」という苦悩は描かれていた)。それよりも、病気の恐怖と向き合いながらも挑戦し続ける力強さのほうが印象的に描かれていて、おそらくそこがこの映画の一番伝えたかったことなのだろう。それはそれで、この映画の大きな魅力だと思ったし、自分にも強く響くものがあった。
ただ、個人的にいちばん感動したのは、あるALSのママさんが電動車椅子をリースして、それに乗って子どもたちと遊べるようになったことを本当にうれしそうに話していた場面。あのシーンには、ちょっとウルっときてしまった。医師として、というよりも、小さい子どもをもつ親として、自然と感情移入したのだろう。
また、今回の主人公のお二人が出産に向けて歩んでいたエピソードも、とても気になっていたので、映画の主旨とは少しずれるかもしれないけれど、あのあたりの話ももっと聞いてみたかったな、なんて思ったりもした。(と思っていたら、こちらのサイトでそのあたりのエピソードが観れたので、お時間のある方はぜひそちらも!)
いずれにしても、この映画を通じて、苦悩や逆境を受け入れながらも挑戦していく力強さを感じることができた。
特に印象に残ったのは、情報収集能力の高さだ。もちろん、その背景には「何かできることがある」「世界をもっとよくしたい」という強い思いがあるからこそなのだろう。情報を集め、実際にいろんな人に会って交渉し、行動に移していく――その行動力こそが、武藤さんの最大の強さなんだと感じた。
医師も同じ。医学の情報は日々めまぐるしく更新されていて、それをいかにキャッチし、必要に応じて取り入れていくかはとても重要なこと。そしてさらに、その情報をどう患者さん一人ひとりの事情に応じて「かみ砕いて」届けていくかが、医師の大切な仕事だと思う。
情報収集と行動力。どの分野でも大事なことだと改めて思う。僕は武藤さんのようにはなれないけれど、僕なりに、日々こつこつと頑張っていこう。そんな気持ちになった。


コメント